借用書を理解して安全な金銭貸借をする方法【リスクを軽減するために必須】

借用書は個人間の貸借にも必要な書類

友人や家族間でお金の貸し借りをする際には、必ず金銭消費貸借契約書を作成するようにしましょう。特に親しい友人や家族の場合、金銭消費貸借契約書を作成しなくても、口約束で解決することが多いようです。口約束通りにお金を返しても、返済が1日でも遅れたり、借入期間が長くなったりすると、記憶が曖昧になりがちです。そのため「○○日に返すって言ってなかったっけ?」「○○日に返すって言ってなかったよね!」といった金銭トラブルに発展する可能性が高くなります。金銭消費貸借契約書は、当事者間で解決に至らない場合に、第三者に対して、当事者間で借金があったことを証明する役割を果たすため、借りた後の金銭トラブルに備えることができるのです。金銭消費貸借契約書は、お金を貸す側だけに必要だと思われがちですが、実は、お金を借りる側にも必要なものなのです。例えば、金銭消費貸借契約書を作成せずに10万円を借りたとしても、貸主が20万円を貸したと勘違いしてトラブルになる可能性がある。事前に金銭消費貸借契約書を作成しておけば、そのようなトラブルを防ぐことができます。

借用書がないと債務の証明ができない

借用証書でお金を貸したことを証明する資料がなければ、返済義務を証明することは困難です。これは、お金のやりとりがあったという事実を証明できないからです。どんなに良い友人でも、借用証書を作成せずにお金を貸せば、相手が返済を拒否したときに貸した金額を請求できなくなります。もちろん、LINEなどのアプリでお金を貸したことがわかるデータがあれば良いですが、電話や口約束では何も残らないので、注意してください。 また、振込履歴もお金を貸した証拠にはなりませんので、注意してください。仲の良い友人であっても、経済状況がずっと良くないと正常な判断が難しく、嘘をついてでも友人からお金を借りようと考える人もいます。自分を守るためにも、お金の貸し借りで金銭トラブルや人間関係のトラブルにならないよう、借用書を作成することが重要です。

訴訟の証拠として使える

家族や友人がいくら時間をかけてもお金を返してくれない場合、裁判をしなければならない状況になることがあります。正しい約束手形があれば、最終的に裁判を起こせば、強制的にお金を返してもらうことができます。 逆に約束手形がなければ、お金を貸したことを証明するのは難しいので、100%お金が返ってくるという保証はありません。約束手形は裁判になると非常に強力な武器になるので、念のため約束手形を作成しておきましょう。

書き方が分からなければ借用証書の画像検索

借用証書の画像検索をすれば、無数に出てきます。

基本的な借用書の書き方ポイント7つ

ポイント①書面に「借用書」と表記する

金銭消費貸借契約書を作成する際には、その書類が何を指しているのかが明確になるように、必ず「金銭消費貸借契約書」と書類に表記してください。そうしないと、その書類が領収書や預かり証と解釈される可能性があります。書類を作成する際に使用する紙は、チラシの紙である必要はなく、名刺の裏や領収書に金銭消費貸借契約書を書いても法律上有効です。法的効力がないと思う人もいるかもしれませんが、名刺の裏や領収書に金銭消費貸借契約書を書くことは、法的処理をする際に十分な証拠と見なされます。金銭消費貸借契約書に何を書くかではなく、金銭消費貸借契約書であることがわかる書類を作成することが重要です。

ポイント②お金を貸した日付で作成日を記入する

金銭消費貸借契約書を作成する際には、金銭を貸し付けた日に必ず金銭消費貸借契約書作成日を記入するようにしましょう。これは、その日に金銭の貸付があったという事実を証明するために必要なことです。金銭の貸付が行われた日がわからないと、金銭消費貸借契約は法的に無効なものとして扱われる可能性がありますので、注意が必要です。一般的には金銭消費貸借契約書を完成させてからお金を貸した方が、お金を貸した日を忘れることがないと言われています。

ポイント③返済日は曖昧な表記にしない

金銭消費貸借契約書に期日を記載する場合は、「○日後」「○月○日まで」といったあいまいな表記ではなく、「○日」「○月○日まで」といった正確な表記を心がけてください。納期は「○年○月○日」と明確に表記する。よく「○年○月○日までに」という曖昧な表記をされる方がいますが、これではどの年、どの月、どの日を指しているのかが特定できません。そのため、期日が今年なのか来年なのかが明確でないと、事務処理を進めることが難しくなります。さらに、金銭消費貸借契約書に期日が明記されていない場合、5年で返済義務が消滅する可能性もあります。返済期限を明記することで、返済が滞ったときに借主に返済を催促することが可能になりますので、必ず記載してください。さらに、「毎月3万円を分割で振り込む」「○年○月○日までに現金で一括返済する」など、返済期日と一緒に返済方法も指定しましょう。これで

ポイント④利息制限法の上限金利を超えない金利と利息を設定する

返済方法の詳細を決める際には、上限金利を超えないような金利や利息を記載する必要があります。借りたお金をそのまま返してもらうのであれば特に問題はありませんが、利息をつけるのであれば、利息制限法の上限金利を超えないように注意してください。利息制限法とは、お金を借りる人を高い金利から守るために、上限金利を15~20%に設定した法律です。

金額 利息制限法の上限金利
~10万円 年20.0%
10万円~100万円 年18.0%
100万円~ 年15.0%

利息制限法に定める制限を超える利息については刑事罰の対象とはなりませんが、超過分は借主に返還しなければなりません。さらに、約束の期日までに返済が行われなかった場合、貸主は遅延損害金を請求することができます。遅延損害金とは、返済が間に合わなかった場合に貸し手が被る損害の賠償に近いものです。また、遅延損害金は利息制限法により次のように定められています。

金額遅延損害金 遅延損害金
~10万円 年29.2%(利率の1.46倍)まで
10万円~100万円 年26.28%(利率の1.46倍)まで
100万円~ 年21.9%(利率の1.46倍)まで

ポイント⑤借用書に必要な記載事項

金銭消費貸借契約書には、最低限以下の必要事項が記載されていなければなりません。これらが記載されていれば、法的には有効な書類として認められます。つまり、上記が記載されていれば、何を書いても有効ということになります。ただし、借入金額が100万円を超える場合は、金銭トラブルを防ぐためにも、より具体的な内容を記載することが望まれます。

・「借用書」という表題
・お金を貸した日付・書類の作成日
・金額
・返済方法
・返済期日
・お金を借りる人の名前・住所・印鑑
・お金を貸した人の名前

ポイント⑥貸借の事実が分かる文言を明記する

金銭消費貸借契約書には、必ず金銭を借りたことを明らかにする文言、例えば次のような文言が必要です。

・上記契約書に基づき、融資を受けました
・契約書に従い、上記金額を借用します
・上記金額を借り入れました

上記はあくまで例ですが、「上記の通り借りました」「上記の通り[日付]に借りました」など、お金を借りたことが明確であれば、他の記載でもかまいません。

ポイント⑦債務不履行となった場合の対処を書いておく

友人や家族にお金を貸して、相手が返済できなくなった場合、契約違反となる可能性があります。そのような事態に備え、金銭消費貸借契約書に具体的な対策を書いておくことで、契約違反が発生した場合に発生する損失を最小限に抑えることが可能です。借主が返済不能になっても貸主が回収できるように、以下の項目を金銭消費貸借契約書に記載しておくとよいでしょう。

・返済期限までに返済が行われない場合、動産を売却することの同意
・返済期限までに返済が行われない場合、連帯保証人が返済を行うこと
・返済が不可能な場合の金利変更許可

法的に有効な借用書の書き方で最低限のルール

最低限のルール①1万円を超える貸借は印紙税を貼る

万円を超える金銭の貸借を行う場合、個人で金銭消費貸借契約を行う場合でも、課税文書の一つであるため、受領印が必要です。領収印がなくても法律上無効にはなりませんが、印紙税法違反として脱税を疑われることがあります。印紙税の必要額は以下の通りです。

貸借金額 印紙税額
1万円未満 非課税
10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下 400円
50万円を超え100万円以下 1,000円
100万円を超え500万円以下 2,000円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円

最低限のルール②署名と捺印をする

融資の書類を作成する際には、貸し手と借り手の両方の署名と捺印が必ず必要です。誰が誰にお金を貸したかを明確にするために、文書に明記する必要があります。署名捺印の代わりに署名印を押すことも可能ですが、文書の偽造を防止するためには印鑑を使用することが最適です。また、印鑑を作ることができない場合は、拇印でもかまいません。サインをするときは、必ず手書きで行いましょう。万が一、金銭トラブルが発生しても、署名が手書きであれば、筆跡鑑定に利用でき、法的拘束力が高まります。署名・捺印のない融資書類は法的効力がなく、裁判で有利になるかどうかも不明なので、必ず署名・捺印を入れるようにしましょう。

最低限のルール③金額は漢数字で記載する

金銭消費貸借契約書を作成する際には、書類の改ざんを防ぐため、金額を漢数字で記載することが重要です。例えば、金銭消費貸借契約書に「10,000円」と書いた場合、改ざんされて「20,000円」と書かれてしまう可能性があります。同様に「1,000円」と書いても、「10,000円」「7,000円」と改ざんされる可能性があるのです。漢数字にすることで、数字を改ざんすることができなくなるのです。貸主が改ざんすることは考えにくいですが、後々のトラブルを避けるためにも、金額は必ず漢数字で記録しておくとよいでしょう。

最低限のルール④借主と貸主を特定できる住所を記載する

金銭消費貸借契約書を書く際には、貸し手と借り手が明確にわかるような住所を記載することが必要不可欠です。住所を書くときは、鉛筆やペンではなく、色あせないペンを使うことが重要です。契約書の内容は、パソコンで無料のPDFテンプレートを使って書いてもかまいませんが、署名は原本でなければなりません。連帯保証人が必要な場合は、連帯保証人の住所と署名も自筆で記入する必要があります。

借用書は金銭貸借契約の証拠として法的効力を持つ書類

金銭消費貸借契約書とは、家族や友人にお金を貸す際に作成する、金銭消費貸借契約の証拠となる法的拘束力のある書類です。きちんと作成された金銭消費貸借契約書は法的な重みがあり、債務不履行や返済のトラブルが民事裁判にまで発展した場合、その証拠となる。内容が証拠として認められれば、訴訟や差押えによる債権回収が可能になります。お金を貸す場合、通常、裁判のことを考える必要はありませんが、不測の事態を避けるために、返済不能になる可能性を考えておく必要があります。

公正証書の作成が確実に金銭トラブルを防げる

金融トラブルを確実に防ぎたいのであれば、個人でローン書類を作成するのではなく、公文書を利用するのがよいでしょう。公文書とは、公職大臣が任命した公証人が発行する文書のことです。個人で作成した借用書よりも法律的に有効で、裁判をせずにお金を取ることができます。実際、法務省の公式サイトには、公文書を利用することでお金を強制的に返還することができると記載されています。

金銭の一定額の支払を内容とする公正証書で、債務者が金銭の支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものは債務名義となり、執行力を有します。
出店:民事執行法22条5号

作成した公文書は公証人が保管するため、改ざんされる心配はありません。また、書類を紛失した場合も、公証人に発行してもらうことも可能です。万が一、取り返しがつかなくなった場合、訴訟に必要な費用や裁判時の精神的負担が発生します。しかし、公文書を利用すれば、返済されない場合でも裁判をすることなく強制執行の手続きを進めることができます。

借主に返済能力が無いと結局は貸主は泣き寝入り

きちんとした金銭消費貸借契約を結んでも、借主に返済能力がなければ返済してもらうことは困難です。例えば、仕事をしていない人や、多重債務を抱えている人は、期日までに返済できないことが多いです。お金を借りる人は、経済的に苦しい状況にあるのは事実です。その時だけ困っているのであれば問題はないのですが、経済的に困っている人は、時に嘘を言ってお金を借りることがあります。ですから、返済能力のない人には、お金を貸さない方がよいでしょう。返済能力のない人にお金を貸す場合は、返済期限を延ばしたり、分割払いにしたりするなどの対策が必要です。返済ができない場合は、少額訴訟や民事調停などの法的手段をとることで、お金を回収することが可能です。しかし、お金がかかるので避けた方がよいでしょう。ですから、条件がいいからといって、お金を貸すのはやめましょう。

消費貸借には10年の時効がある

借用証書があってもなくても、借金には10年の時効があります。支払期日から10年経過してもお金が返済されない場合、その借金は時効により無効となります。時効は自動的に成立するわけではなく、お金を借りた人が、お金を貸した人に対して「時効が成立しているので返済の意思はありません」と宣言することで成立します。この時効の宣言は口頭で行うのではなく、内容証明で行う必要がありますので、知らない間に10年経っていて内容証明が送られてきた場合は、借りたお金が戻って来ない可能性がありますので、ご注意下さい。但し、貸主が「貸したお金を返して!」と催促すれば、その時点から時効は更新されるので、実質的に借金の時効で逃げ切れることはありません。

借用書は借りた後から作成してもOK

金銭消費貸借契約書は、お金を貸した日に作成するのが一般的ですが、その後に作成することも可能です。このような契約書を「債務承認和解契約書」といい、その内容は金銭消費貸借契約書と同じです。ただし、債務承認和解契約書を作成する際には、以下のような借主への債務を認める文言を入れる必要があります。

・当事者Aは当事者Bに対し、〇〇〇の支払義務を認める。 ・当事者Aは当事者Bに対し、〇〇〇の債務を承認する。

債務承認和解契約書は公正証書として作成することもできますので、まだ金銭消費貸借契約書を作成していない方は早めに作成しておくとよいでしょう。

弁護士や行政書士に借用書作成を依頼する

融資書類の書き方がわからない、本当に大丈夫なのか不安という方は、弁護士や司法書士に書類作成を依頼するのも一つの方法です。弁護士や行政書士に融資書類の作成を依頼すると、1万円から2万円程度で作成してもらえます。多額の借入をする際に、借入書類に法的な力がなければ最悪です。不安な人や多額の借り入れをする人は、こういった事態を想定して1~2万円程度で専門家に依頼すると良いでしょう。また、弁護士や行政書士に書類作成を依頼することで、利息や連帯保証人がついていてもきちんと対応してくれるので、貸す側も借りる側も納得してローンを組むことができます。

まとめ

ここでは、法的に有効な金銭消費貸借契約書の書き方や、最低限守らなければならないルール、金銭消費貸借契約書の書き方の基本的なポイントについて詳しくご紹介しています。金銭消費貸借契約書を作成することで、お金の貸し借りの際にお金に関するトラブルを回避することができるため、たとえお互いの条件が良く、信頼関係がある場合でも作成した方が良いでしょう。仲が良くても、相手に「金銭消費貸借契約書を書いてください」とは言いにくいかもしれませんが、金銭消費貸借契約書を作成することは、貸す側と借りる側の双方にメリットがあります。貸出契約書を作成する際は、今回紹介した書き方を参考に、正しい貸出契約書を作成しましょう。